研究概要 |
次世代LSI開発において,電流や応力によって原子が輸送されるマイグレーション破壊防止がその信頼性確保の点から重要な問題であることが指摘されている.LSI配線におけるマイグレーションでは,原子は高速拡散路と呼ばれる配線内粒界や絶縁層との界面に沿って輸送される.したがって,その破壊機構は,粒界・界面ネットワークに強く依存する.本研究では,この機構について数値シミュレーションに基づいて解析することを目的としている.本研究により得られた成果は以下のようにまとめられる. (1)多結晶材料のエレクトロマイグレーションとストレスマイグレーション競合下の原子輸送解析に対する汎関数を導出した.また,それに基づく有限要素法的数値解析法について検討した.とくに,1粒界(界面)1要素モデルに適用し,競合マイグレーションの場合に有効であることを確認した. (2)無欠陥の多結晶配線のマイグレーション解析より,高密度電流に誘起される応力の分布を求めた.界面と粒界の会合部に大きな応力が発生することが判明した. (3)バンブー構造配線の解析より,キャビティからの原子の流出にはストレスマイグレーションが支配的であるが,その流出原子を遠方の流会に運ぶのはエレクトロマイグレーションである. (4)直線配線中のキャビティ周辺のマイグレーションについて解析し,ネットワークが成長速度を加減速することを明らかにした. (5)活発な界面拡散は周辺の粒界の原子流れを活発にするネットワーク効果を有している.界面にキャビティが発生した場合には,この効果によって成長が加速される. (6)屈曲部を有する多結晶配線の電流密度分布および応力分布について検討した.屈曲部では電流が集中するため,原子流束が乱れ,キャビティの成長が加速される.
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