研究概要 |
従来の極低温硬さ計を改良して,機能性をあげた硬さ試験機の開発と,その冷却部を利用した摩擦試験毛の開発に関し,3年間の研究において,以下の成果を挙げた. 1)従来の液体ヘリウムを用いた浸潰冷却から,GM冷凍機を用いた硬さ計を開発した.課題であった試料を任意の温度に制御することは可能となった.しかし,GM冷凍機の2ndステージと試料との接触熱低抗により,試料をステージ温度(4K)までは冷却できず,最低30Kまで冷却できた. 2)硬さ計の性能を検討するために,従来の装置を用いて測定した値と,今回開発した装置を用いて測定した値を比較すると,硬さはほぼ同じ値と温度依存性を示し,硬さ計の性能を十分満足することを得た. 3)硬さ試験の材料として,当初はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L)を用いたが,その後,測定対象の材料をバルク高温超電導体に主力を移した.これは,脆性材料であるバルク超電導体を磁石として用いるときに極低温で励磁するが,その際,ローレンツ力で自己破壊することがあるために機械的特性評価,特に破壊靭性値の評価が必要であるためである.しかし,破壊靱性値の有効な評価方法はなく,この場合,それは硬さと圧痕から発生したき裂の大きさから算出される. 4)測定したバルク超電導材はYBCO,((Nd, Eu, Gd)BaCuO)などである.バルク超電導体は超電導相と常電導相が混在し,しかもき裂が内在しているために,硬さの値のばらつきは大きい.また温度依存性は温度低下とともに単調に増加する傾向を示した.一方,硬さ測定から求めた破壊靱性値もばらつきが大きく,温度の低下とともに減少する場合もあったが,場合によっては増加傾向を示した.(001)面に比べ,(100)面には多くのき裂が存在し,硬さと破壊靭性値のばらつきは大きくなった. 5)硬さ計の冷却部を利用した往復すべり摩擦試験装置を製作し,装置の性能を確認した.摩擦力とヒステリシスループから摩擦試験装置としては性能を満足することを得た.しかし,種々の材料の摩擦の温度依存性のデータをとるまでには至っていない.
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