研究概要 |
本研究では,不釣り合い振動の適応抑制アルゴリズムを完成させ,数学的にもその漸近安定性を証明した.さらに,実験によってその有効性を実証した.また,定常不釣り合い振動のみならず,危険速度通過の非定常振動などにも適用できる可能性を詳細に検討した.このアルゴリズムは複数の調和振動やノイズが混入する信号からでも十分に性能を発揮できる.さて,フライホイールの研究では10MWh級の超電導磁気浮上フライホイールの研究を行い,内外で始めて概念設計結果を提案し,制御法について言及し考察した.また,ジャイロ効果を考慮したフライホイールのモデリングと低次元化法の提案や制御系設計法について提案した.さらに,ゼロパワーゼロロス磁気軸受の提案をし,理論的実験的に有効性を証明した.このゼロパワーゼロロス磁気軸受の実証と成果は省電力型磁気軸受の分野とこれに関する関連分野に大きなインパクトを与えると思われ,当該産業分野に大きな貢献をするものと確信する.その長所を具体的に列記すると,まず,(1)バイアス電流が不要なため,小さなパワーアンプで十分である。(2)パワーアンプの飽和が格段に回避できる。(3)永久磁石が不要であるため,渦電流損失を微小に抑えられ回転効率が上がる。(4)電磁石のみであるため実装と制御が容易である。(5)大域的に線形化を行っているため、あるいは,リアプノフ直接法により大域的に安定であるため,制御特性の信頼性の高上につながる。(6)全体として大幅なコスト削減につながる。などである。このような利点を有する磁気軸受システムは、これまで概念においても研究開発においても、まったく現存しなかった。今後,この新方式磁気軸受システムを実機レベルで実現されるならば、一層のニーズを引きだすことになり、産業界への波及効果も莫大であると確信する。
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