研究概要 |
本研究では,まず,SrTiO_3及びSi基板にKNbO_3薄膜成膜したときのSAW伝搬特性を検討した結果,下地基板と成膜するKNbO_3の格子定数から,実現が期待できる組み合わせでは,(001)<100>KNbO_3//(110)<1-10>SrTiO_3が波長に対する規格化膜厚1で電気機械結合係数がk^2=10.4%であることがわった。 ターゲットには,K_2CO_3:Nb_2O_5=1:0とK_2CO_3:Nb_2O_5=3:1のターゲットの組を用いる方法が有効であった。成膜条件を検討することにより,当初より結晶性のよい膜を得ることが可能になった。SAWデバイスの低損失化,及び非線形デバイスとしての応用に向けては,更に結晶性を向上する必要があるなど,新たな研究課題が見つかった。 次に,KNbO_3薄膜の分極特性とSAWデバイスとしての特性の対応がSAWデバイスの特性向上に重要であるとの観点から,SrTiO_3基板上にMOCVD法で作製されたKNbO_3薄膜の分極分布を,非線形誘電率顕微鏡により観測し,それに対応させてSAWの励振・伝搬特性を調べた。この結果,KNbO_3薄膜作製において,特に分極操作を行わなくてもある程度の分極が基板の裏から表面の方向に向いており,その分極状態は室温ではかなり安定であることがわかった。また,成膜条件によっては,分極の大きさに分布が生じることが,非線形誘電率顕微鏡により観測された。分極に分布がある部分のSAWの特性の差は挿入損失で約3dBであった。 また,SAW材料としての特性向上のため,薄膜を加熱した状態で電圧を印加することで,分極操作を行うことを検討した。as grownの状態で分極に分布があった基板に分極操作を行った結果,as grownの状態で分極分布がない基板とほぼ同じ状態になった。このことから,成膜後の分極操作が可能であることがわかった。
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