研究概要 |
本研究では,科学研究費重点領域研究「法律エキスパートシステム」に関する研究成果,および知識情報処理に関するコンピュータ援用教育システム(CAI)の開発実績の二つの基本的成果を融合し,法律教育における計算機援用教育を促進するための基礎研究を目的とし,交渉過程におけるあいまいさを考慮した法的推論エンジンの開発および,CAIとしての実装を行い,法学部学生を中心とした試用を通じて基本的機能および教育効果の評価を行った.題材としては国際統一売買法(CISG)を採用し,これを事例データベースとして構築し,推論を行う. 初年度(平成11年度)は,ファジィ推論に基づく,あいまいな事例表現および事例間の類似性判断を行うことのできる推論エンジンの開発を行った.二年度(平成12年度)には,法的推論を行う上で重要な基礎となる,類似度についての研究を重点的に行った.最終年度にあたる今年度は,前年までの成果をもとに,法的推論をファジィ推論に基づいて行う法的エキスパートシステムの実装を行い,CAIシステムとしての利用可能性を検証した.開発したエキスパートシステムは推論エンジン,インタフェース部,事例データベースの3主要構成要素から構成されており,事例データベースとしては前年度までにも部分的に利用していた,国際統一売買法の事例をデータベースとして整備し,システムで利用可能なものとした.法学部学生を中心とした被験者による試用の結果,計算機援用教育が他分野に比べて遅れがちな法律分野において,計算機・インターネットによる学習支援の普及・促進につながるものとの評価を得た.また,本研究の成果は,関連書籍3冊,学術論文2編,口頭発表13件(内招待講演・基調講演5件を含む国際会議10件)にもまとめられており,中でも平成12年10月に飯塚(福岡)で開催された国際会議IIZUKA2000では優秀論文賞を受賞するなど,高い評価を得ている.
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