研究概要 |
近年,各地の下水道流域で,豪雨時,マンホール蓋の飛散事故が多発するようになってきている.マンホール蓋飛散の発生原因の一つは,豪雨時,下水道管渠網での遷移流(開水路流れ→圧力流れ)の発生により,マンホール内あるいは下水道管渠内に空気塊が封入され,遷移流れの拡大と伝播に伴って空気塊が圧縮されることにより,マンホール蓋に作用する空気圧が相当程度まで高まってゆくためと考えられる.また,マンホール蓋の飛散後,溢水した氾濫水がマンホール地点の路面上に湛水すると,マンホール蓋の飛散が通行する車両や人からは確認できないため,マンホール内への転落事故を招くこともあるなど,マンホール蓋飛散は早期に防止対策が見出されなければならない問題である. 本研究は,マンホール蓋飛散のメカニズムを明らかにし,蓋飛散防止対策の効果を正確に評価・予測しえる雨水流出シミュレーションモデルの開発を目指したもので,(1)はじめに,マンホール部に空気塊を封入する下水道管渠網の圧力流れを精度高くシミュレートできる雨水流出解析モデルを提示し,下水道管渠システムの水理模型による流出実験を行って本モデルの適合性がかなり高いものであることを確かめた.(2)これにより,マンホール部に封入された空気塊に起因してマンホール蓋に作用する空気圧を精度良く算定することが可能となった.(3)次に,上の水理模型による流出実験を行ってマンホール蓋飛散の主要なメカニズムを明らかにするとともに,マンホール蓋の空気孔およびマンホール壁の吸排気ダクト(取付管)がマンホール蓋に作用する空気圧を軽減させる効果について,同様の流出実験を行って検討し,吸排気ダクト(取付管)を設置すれば,空気圧を大きく軽減する効果の得られること,すなわち,蓋飛散をかなりの程度まで軽減・抑止しえるであろうことを明らかにした.
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