研究概要 |
本研究では,木造建物の軸組や壁体などの個々の構造要素が水平力を受けた時の変形・強度に着目した従来の材料的立場からの研究を基にして,骨組・部材・構造各所の変形の相互関係を把握し,建築構造学・耐震工学的立場から地震時の木造建物挙動を実験的,理論的に明らかすることを目的とし,次の1.〜5.に関する研究成果を報告する。 1.木構造の各種工法による耐震要素軸組面の復元力特性の数学モデル作成の為の基本,ベンチマークテストとして,各種構法による木造軸組面の静的実大水平加力試験を行い,各軸組面の壁倍率評価及びその崩壊挙動を定量的に明らかにした。特徴的な結果として土塗壁軸組面の壁倍率は1.5〜3程度であり,これは建築基準法で示された壁倍率0.5の3〜6倍である。 2.耐震要素軸組面が連続している連続壁モデルの静的水平加力試験を行い,単体の軸組面の耐力及び崩壊挙動を足しあわせて考える事で,連続軸組面の耐力及び崩壊挙動が予測できる可能性を示した。 3.一般的に耐震要素軸組面とは考えられない梁と柱からなる木造軸組において,接合部を補強した試験体を作成し,実大静的水平加力試験を行った。その結果,大きく耐力が上昇するすることと特徴的な崩壊モードを呈することを確認した。 4.上記の実験結果を基にして,各種耐震要素軸組面を有する木構造建物を対象として,既往の研究及び本研究で提示した履歴復元力特性を用いて地震応答解析を行い、各種木造建物の地震時挙動特性を明らかにした。特に1質点せん断型モデルに置き換えることが可能な木造寺社建築では地震時応答において変位一定則が確認できた。 5.伝統的社寺建築や住宅在来構法の軸組を対象とした解析法の展開について,伝統的木造軸組建築の柱-通し貫仕口部の曲げ繰り返し実験及び住宅接合部についての曲げ繰り返し実験を行い,その実験から得られた履歴曲線のモデル化を試みた。
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