研究概要 |
物質輸送や化学反応経路を解析する目的で,固体試料表面の化学ポテンシャル分布を測定する化学ポテンシャル顕微鏡の構築を目指した。本研究では,表面酸素ポテンシャルを測定する手法の開発を行い,固体電解質/ガス電極系に応用し,以下の結果を得た。 1.固体酸化物イオン導電体である安定化ジルコニアまたはセリアを多孔質に成形し(多孔質酸素センサ:POS),その一方を試料表面に接触させ,もう一方に設けた参照電極との間の起電力を測定することで,表面酸素ポテンシャルを測定し得ることを示した。 2.混合導電体フ緻密薄膜電極について,この手法を応用し,表面過程に含まれる2種類の過程を分離測定することができた。 3.上記のそれぞれの過程について,矛盾のない速度式を導くことができたことから,この手法が定量的な扱いに耐えるものであることを確認した。 4.白金などの貴金属細線に安定化ジルコニアの多孔質層を塗布することで,位置分解能を持つμ-POSプローブを作製した。特に,原子間力顕微鏡用のサーマルプローブとして市販されている5μm径の白金線に金属ナフテン酸塩からYSZ層を析出させる手法を開発し,良好な位置分解能(〜1μm)を保ったまま高温での測定が可能なμ-POSプローブを試作した。 5.700℃まで測定可能な試料加熱装置を市販の原子間力顕微鏡に組み込むことで,高温固体電気化学セルの表面観察を可能にした。 6.上記5.の装置でμ-POSを走査させることで,位置分解能のある表面酸素ポテンシャル顕微鏡を構築し得ることを示した。
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