研究概要 |
本研究では,耐食材料としては従来全く注目されていなかったMo窒化物皮膜を,ガス窒化処理によってMo-Ti合金表面に形成し,母体を優先窒化処理によって超微細TiN粒子を分散折出させた高強度で軽量なMo金属とした従来にない全く新しい耐食材料の創製を目指した.主な成果を以下に示す. NH_3ガス中でMo材料を窒化処理した場合に形成するMo窒化物皮膜は主として表層部のγ-Mo2N,内層部のβ-Mo2Nの二層から成っており,内部に生成するβ相は{011}<011>型の極めて珍しい微細双晶で構成されていることを明らかにした.Mo窒化物皮膜の耐食性について検討した結果,Mo窒化物皮膜そのものは沸騰硫酸溶液に対して極めて良好な耐食性を示すことを見い出した.しかし,窒化後の試料冷却中に皮膜にクラックが入ると,クラックの先端部で母相のMo金属が選択的に腐食されることが分かった. この問題は窒化物皮膜をβーMo_2N相単相とすることで解決可能であり,βーMo_2N被覆材料は85wt%の沸騰硫酸中(沸点約237℃)という極めて苛酷な環境下でも完全耐食性を示すことが分かった(腐食速度 : 0.0128mm/year).この値は従来の苛酷環境耐食材料であるTaに比べて約1/30であり,Mo窒化物被覆複合材料は耐沸騰硫酸用耐食材料として有望であることを明らかにした.Mo-Ti合金のN_2ガス優先窒化に関する研究では,Mo-Ti合金は従来の窒化温度(1300℃以上)よりも著しく低温の950℃でも優先窒化が可能であり,ナノスケールの超微細TiN粒子が分散折出することを見い出した.
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