研究概要 |
本研究は,生体適合分子を基幹として構造化された分子集合組織の自由溶液系並びに固定化有機ゲル系においてリパーゼによる脂肪酸エステル合成を行い,以下の知見を得た。 1.自由溶液系 シュガーエステル,ポリグリセリンエステルにより形成した分子集合組織において,リパーゼ(Mucor miehei, Rhizopus delemar)の反応活性が最大に発揮される生体適合分子濃度ならびに有機相水分量の存在を明らかにした。また,速度パラメーターを通じて反応活性を定量的に示した。一方,分子集合組織からのリパーゼの回収に関して検討を行い,水相との接触によりリパーゼを回収できることが認められ,本法が酵素回収をともなう反応プロセスとして展開できる基礎を確立した。 2.固定化有機ゲル系 レシチンにより形成した分子集合組織に生体高分子であるゼラチンを添加し形成した有機ゲル組織にリパーゼ(Candida rugosa, Mucor javanicus, Rhizopus arrhizus, Rhizopus delemar)を固定化し,反応活性が最大に発揮されるゲル相水分量,ゼラチン濃度ならびに両親媒性分子濃度の存在を明らかにした。また,基質の有効拡散係数ならびに分配係数を実測し,有効係数を通じてゲル粒子径と反応活性の関連を推算し,本法を固定化酵素プロセスとして展開する基礎を確立した。固定化リパーゼの繰返し再利用反応およびバスケット攪拌翼型反応器による連続反応を行い,反応活性が長時間安定的に発現することを明らかにした。 3.分子集合組織の微細構造・物性 電気伝導度測定による集合組織の微細構造ならびに物性の検討を行い,電気伝導度が急激に増加する温度条件を見出し,組織間の相互作用が操作温度により変化することを明らかにした。また,集合組織への電解質および酵素の可溶化あるいは有機溶媒の溶媒物性により大きく相互作用が変化することを明らかにした。
|