研究概要 |
昆虫細胞-バキュロウイルス系による機能性タンパク質の高生産バイオリアクタープロセスを構築するための基礎を確立することを目的として,固定化していない細胞による組換えタンパク質の生産特性の解析および固定化による高密度培養と固定化細胞による組換えタンパク質生産について検討した. まず,組換えバキュロウイルスの感染時に昆虫細胞Sf9を新鮮培地に懸濁させ,種々の初期細胞密度および感染多重度(MOI)の下で振とう培養を行った.ウイルス感染時から組換えタンパク質の生産が完了する時刻までの生細胞密度の時間積分値に対して組換えタンパク質の生産量をプロットすることにより,組換えタンパク質生産に及ぼす細胞密度およびMOIの影響を解析した.組換えタンパク質生産は培地中の栄養分の有無によって著しく影響を受け,1以上の高いMOIでウイルスを細胞に感染させ,タンパク質生産の完了時に生細胞密度の時間積分値が8×10^6cells・d/cm^3に達するような初期細胞密度で培養を行うことにより,組換えタンパク質生産を至適化できることがわかった. 次に,多孔性の細胞保持粒子(biomass support particles,BSPs)を用いる昆虫細胞の固定化と組換えタンパク質生産について振とう培養において検討を行った.平均孔径が60μmのポリビニルホルマール樹脂多孔質体粒子(2×2×2mm)をBSPsとして用いると,Sf9は振とうフラスコ内で自然にBSPsに固定化され,定期的に培地交換しながら培養を継続すると,固定化細胞は5×10^7cells/cm^3-BSP以上の高密度に達することが示された.組換えウイルスを感染させた固定化細胞は,高密度状態においても,培地中の栄養分が枯渇しないように適切に培地交換しながら培養することにより,固定化していない細胞の最大比生産速度と同等の比速度で組換えタンパク質を生産可能であることが示唆された.
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