研究概要 |
本研究の目的は,計測科学におけるダウンサイジング化のニーズにこたえるため,現在開発を進めている高速・高倍率濃縮法としての均一液液抽出法による測定試料の微小化とこれに連動したダウンサイジングを指向した分析装置を融合することにある。この目的の達成によって分析システムとしてのトータルなダウンサイジングを実現する。二カ年の研究期間で得られた成果は,次のようである。 1.三成分系均一液液抽出を前段濃縮法とする各種クロマトグラフィーの創出. 1)HPLC分析システム:水/ピリジン/クロロ酢酸エチル三成分溶媒系においてpH依存相分離現象を利用した新しい均一液液抽出を開発した。本法では,水溶性ポルフィリンを用いて,吸光検出-HPLCによる金属イオンの同時定量法を行なった。 2)GC/MS分析システム:1)で見出した均一液液抽出をGC/MSの前処理に応用し,環境ホルモンとして疑われている12種のクロロフェノール類の同時定量法を開発した。 2.フッ素界面活性剤系均一液液抽出/点滴ろ紙/各種スペクトロスコピーの創出. 1)蛍光分析システム:フッ素系界面活性剤のpH依存相分離による均一液液抽出法を用いた。22種類のアミノ酸の抽出・濃縮・検出等を検討した結果,トリプトファンのみを選択的に蛍光検出することに成功した。 2)蛍光X線分析システム:高原子価金属を含む15種類の金属の同時定量法を確立した。また,三種類のキレート試薬を単一操作で同時に使用する新しい概念を提案した。 以上,当初計画していた均一液液抽出とダウンサイジングを指向した各種分析装置との融合によって超微量成分を定量できることが実証され,十分な成果を挙げた。
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