研究概要 |
東北地方の河川では,融雪と梅雨期の降雨とで7月下旬まで水量が豊富だが,年によっては8月に水不足となる.そこで,7月までの豊富な水を8月まで国土に留めおくために,水田に通常よりも多くの水を入れて水稲を栽培しながら,貯水することを考えた.本研究の目的は,その間の深水条件下での水稲の生育を解析し,新しい水稲栽培技術を開発することにある.水管理法の基本的な枠組みを作るために,また,深水栽培における施肥方法を確立するために,1999年から2001年までの3年間にわたり,宮城県農業短期大学の水田に通常の水管理をする慣行区と深水区とを設けて栽培実験を行った.また,施肥法を開発するために,異なる割合で被覆型緩効性肥料と化成肥料とを混ぜた肥料区を2〜3区設けた.5月12日(14日:1999年)に1株3本,30cm×15cm田植えした.深水区では.移植後21日目から,最上位展開葉のカラーの位置を目安に,徐々に水位を上げ続けた.また,2001年には,深水区で,最高分げつ期に落水する深水落水区を設け,水管理の多様性の検討をした.移植後21日目から,1週ごとに生育調査を行い,収穫期に収量調査を行った.また,群落としての生長を解析するために,最高分げつ期と穂孕み期,出穂期,穂揃い期に層別刈り取りを行った.その結果,施肥法に関わらず,深水区では慣行区より,茎数が少なく,草丈が高く推移した.各時期の草高は深水区の方が高く,群落の構造としては、慣行区で見られる葉群の階層が上に約10cmずつシフトした状態であった.その傾向は最高分げつ期前から認められた.収量には被覆型緩効性肥料の効果が認められた.3年間の実験の結果をまとめ,それを基に,田植え後早い時期から深水にする従来の方法と,この実験の過程で新たに考案した収量も重視する7月中下旬から貯水する方法との2タイプについて,水管理法の枠組みを検討し直し,水利学的な考察を深めた.
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