研究分担者 |
中川 和憲 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (50217668)
中島 豊 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (50135349)
金田 安史 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10177537)
古森 公浩 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (40225587)
米満 吉和 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (40315065)
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研究概要 |
本研究により得られた主な実績概要は以下のとうりである。 1、新規遺伝子導入システム確立に向けたSeVベクターの生物学的特性に関する研究:1)β-gal,luciferaseとともにVEGF,FGF-2,ecNOSなどの遺伝子を搭載した組み換え型SeVの血管壁構成細胞とともに諸臓器組織・細胞へのin vitro,in vivo導入ならびに発現効率はAdeno virusベクターに比べて遜色なく良好であり、加えて短時間(10分以内)の接触で十分な導入が可能であった。2)SeV投与後の局所、全身反応(炎症細胞浸潤、炎症性サイトカインなど)の解析、体液性ならびに細胞性免疫反応機構の解析を進め、欠損型seVの開発や免疫寛容状態の導入法などベクターの改善とともに宿主反応の制御法を検討中である。また3)小動物血管壁では、内腔からの投与で内皮細胞のみならず中膜平滑筋細胞まで遺伝子導入が可能であるが、ヒト大腿静脈瘤症例由来の静脈壁では硬化内膜により中膜平滑筋細胞への導入は強く阻害され、今後、目的に応じた導入経路の検討が必要であることが判明した。 2、SeVの安全性に関する検討:SeVならびにSeV・外来遺伝子の小動物(ラット、マウス、家兎)における投与局所の組織変化、全身炎症反応に加えてSendai virusゲノムと外来遺伝子の体内分布などの検討を終了し、サルを含めた大型動物における安全性チェックを進めている。 3、虚血組織における血管新生の分子機構:1)急性下肢虚血動物モデルでの外来性VEGF,FGF-2による側副血行路発達促進効果の検討:SeVベクターを用いてVEGF,FGF-2遺伝子を虚血筋組織に導入すると、FGF-2遺伝子導入により内因性VEGF,HGF発現が亢進し、組織学的検索ならびに血流測定により新生血管の増加と側副血行路形成が証明でき、明らかな下肢虚血の改善が誘導された。VEGF遺伝子導入では明らかな下肢虚血の改善は認められなかった。2)血管新生因子(VEGF,HGF,FGF-2)は相互に関連しあって内皮細胞に作用して血管新生を促進していること、とくにin vivoにおける最終作用因子はVEGFであるが、血流増加にはFGF-2など他の血管新生因子の協調作用が不可欠であることを明らかにした。 4、血管新生関連因子の遺伝子制御:病的血管リモデリングに関与しうる諸因子の産生制御法の開発の為に、炎症性サイトカインの転写誘導に関与するSp-1,AP-1,NFkB,Egr-1のデコイオリゴを用いたin vitro,in vivoの検討を行った。とくにSp-1,AP-1に対するデコイを用いてVEGF,TGF-β1,組織因子など血管新生に関与する諸因子の腫瘍細胞、平滑筋細胞産生制御に有効であることを証明し、現在、各種血管新生病動物モデルを用いた治療的有効性について病理学的検討を進めている。 5、モノクロタリン誘導ラット肺高血圧症の発生における肺血管リモデリングに関する研究:本症の発生には血管壁を中心としたマクロファージ浸潤による組織改変が重要であることを組織学的、また改変型MCP-1遺伝子導入により本症発生が予防されることにより明らかにした。 以上の成果を踏まえて、現在、「下肢虚血に対するSeV-FGF2遺伝子導入による血管新生療法」を学内倫理委員会に申請するべく準備中である。
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