研究概要 |
1)遺伝子不安定性についての検討の結果,胃の分化型腺癌に比較的高頻度にMSIが認められた。興味深いことに,陽性例の大多数において腸上皮化生部においてもMSIが検出された。さらに,重複癌,多発癌について検索を行なった結果,これらの例では約70%の症例MSIが陽性であった(Gut,46:790-794,2000)。加えて,代表的DNA修復遺伝子であるhMLけ1遺伝子に,これらのMSI陽性例ではプロモーター領域の高メチル化が認められ,かつhMLけ1の蛋白発現は完全に消失していた。従って,メチレーションがMSIと密接に関連している可能性が示された。 2)新しいムチン遺伝子A3D4の発現を検討したところ,興味深いことに,本遺伝子は,正常胃粘膜ならびに慢性胃炎の腸上皮化生には発現しないが,癌周辺部の腸上皮化生部に強い発現を示した。現在,さらに本ムチン遺伝子のプロモーター領域のメチル化についても検索を進めている。 3)腸上皮化生部の遺伝子群について,我々が開発した方法(PNAS:96:610,1999)を用いて系統的にメチル化を検討した結果.多くの遺伝子が高メチル化を受けていた。そこで,さらに,cadherin,p16についても検索を進め,これらが,MSI陽性例で高頻度にメチル化されていることを見い出した。(Int.J.Cancer,83:303,1999)。加えて,最近p53を制御する14-3-3シグマ遺伝子のメチル化を新しく見い出した(Cancer Res.,60:4353,2000)
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