研究概要 |
本研究では、細胞の剥離・変形刺激に応答する可能性のある遺伝子として,ARF-GEP100とThymidine phosphorylase (TP)に着目した。 ARF-GEP100は,Sec7 ドメインのホモロジー解析から同定されたADP-ribosylation factor 6(ARF6)の活性化因子(GDP/GTP交換因子;GEP)でありエンドサイトーシスのプロセスやアクチンを中心とした細胞骨格系の制御への関与が示唆される。ARF-GEP100のARF6に対する作用は特異的で,ARF1,5に対する活性が2〜3倍なのに対し,ARF6に対しては12倍もあった。Northern blotにて組織分布を見ると,白血球,脳,脾臓肺,肝,腎などに多く分布していた。細胞運動への関与につき検討するため,ヒト非小細胞肺癌切除組織中のARF-GEP100の蛋白発現をwestern blot法にて調べたところ,隣接正常肺組織に比べ,腫瘍部分で高発現する傾向が認められた。 一方,TPはこれまで血管新生物質として注目されてぎたが,本研究の遂行過程で細胞骨格系の制御に関与している可能性が示された。ヒト非小細胞肺癌切除組織中のTP濃度をELISA法にて定量したところ,従来の報告どおり,隣接正常肺組織に比べ腫瘍組織中で有意に高値を示したが,血管密度との相関は認められなかった。さらにTPは,A549肺線癌細胞株の増殖能には影響を及ぼさなかったが,Matrigelを使ったin vitro invasion assayではA549細胞の浸潤能を増強させた。
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