研究課題/領域番号 |
11557076
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
腎臓内科学
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹羽 利充 名古屋大学, 医学部, 助教授 (20208268)
|
研究分担者 |
宮崎 高志 名古屋大学, 医学部, 医員
|
研究期間 (年度) |
1999 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
13,200千円 (直接経費: 13,200千円)
2000年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
1999年度: 9,400千円 (直接経費: 9,400千円)
|
キーワード | インドキシル硫酸 / 腎不全進行 / 有機アニオントランスポーター / 蛋白代謝物説 / TGF-β |
研究概要 |
インドキシル硫酸の腎不全進行促進作用の分子機序を明らかにする目的で、5/6腎摘ラットを用い腎臓におけるtransforming growth factor(TGF)-β1、tissue inhibitor of metalloprotease(TIMP)-1,pro-α1(I)collagenの遺伝子発現に対するインドキシル硫酸投与の影響を検討した。インドキシル硫酸投与により、血清クレアチニンの増加およびクレアチニンクリアランスの低下が認められ、また糸球体硬化係数の増加と尿細管拡大がより顕著に認められた。インドキシル硫酸投与ラットではさらに腎皮質におけるTGF-β1、TIMP-1,pro-α1(I)collagenのmRNAの著明な増加が認められた。インドキシル硫酸の腎毒性のターゲット部位を明らかにするために、モノクローナル抗インドキシル硫酸抗体を作成し、腎組織の免疫染色を行った。インドキシル硫酸抗体により腎不全ラットでは尿細管上皮細胞、特に拡張した近位尿細管細胞に陽性所見が得られた。インドキシル硫酸投与腎不全ラットではより顕著に拡張した近位尿細管細胞が陽性であった。このことから、インドキシル硫酸の腎毒性のターゲット部位は近位尿細管上皮細胞であることが証明された。インドキシル硫酸は血中ではアルブミンと結合しており腎臓では近位尿細管上皮細胞から分泌されて尿中に排泄されている。腎不全では血中濃度が増加し、近位尿細管細胞への過剰負荷が起こり、近位尿細管細胞の障害をきたし、腎障害の進展を促進すると考えられる。近位尿細管の基底側膜にはパラアミノ馬尿酸(PAH)などの有機酸を血中から近位尿細管細胞内に取り込む有機アニオントランスポーター(OAT)が存在する。OAT1は腎臓、OAT2は肝臓、OAT3は腎臓と脳脈絡膜において発現がみられる。インドキシル硫酸はOAT1によるPAH取り込みを阻害し、またOAT3によるエストロン硫酸の取り込みを用量依存性に阻害した。従って、インドキシル硫酸は、近位尿細管基底側膜に存在するOAT1、OAT3を介して血中から近位尿細管細胞内に取り込まれていると考えられる。インドキシル硫酸投与腎不全ラットでは非投与腎不全ラットに比較してOAT1の発現がより減少しており、OAT3の発現がより増加していた。OAT-1は正常の近位尿細管細胞に発現しており、OAT3は主に拡張した近位尿細管細胞に発現していた。抗インドキシル硫酸抗体と抗OAT3抗体を用いた免疫染色によりインドキシル硫酸とOAT-3の局在部位は一致していた。以上の結果から、インドキシル硫酸は正常では主にOAT1により近位尿細管細胞に取り込まれるが、腎不全では主にOAT3により取り込まれる。慢性腎不全では血清インドキシル硫酸濃度が高くなり、その結果OAT3を発現した近位尿細管細胞内でインドキシル硫酸が高濃度となり尿細管細胞障害を来すと考えられる。
|