研究概要 |
鼓室形成術において,耳小骨の可動性の確認は術式決定上重要な要素となる.しかし,現在のところ,その客観的な測定法は確立されていない.そこで本研究では,術中使用可能な耳小骨可動性測定プローブを作製し,耳小骨可動性の客観的な測定法の確立を目指す.鼓室形成術は直径約10mmの外耳道から見た限られた視野の中で作業を行うため,プローブは手術の障害にならない大きさである必要がある.そこでまず,簡易的な耳小骨可動性測定センサを作成し,その計測結果をもとに,耳小骨可動性測定プローブの仕様を決定し,試作を行った.さらに,このプローブを用い,実験動物の耳小骨(アブミ骨)の可動性計測を行った.この結果,以下の知見が得られた. 1.マイクロマシン技術を応用して作成した超小型容量型力センサと高精度油圧アクチュエータを組み合わせ,十分な精度を有した術中に使用できる耳小骨可動性測定プローブシステムを制作することが可能であった. 2.正常なモルモット5匹について,アブミ骨の可動性計測を行った結果,アブミ骨に与える力と変位の関係には非線形性が見られた.ただし,少変位領域では,力-変位関係は線形とみなせ,その傾きは,平均17±3N/mであった. 3.人工的に固着させたアブミ骨の力-変位関係は,正常耳より得られたものとは明らかに異なった.よって,本装置により,アブミ骨の可動性診断が可能であることが明らかとなった. 今後,本装置を実際にヒトに適用し,耳小骨の可動性を,術中,定量的に求める.さらに,耳小骨保存の可否判断を客観的に行うため,ベテラン医師の経験による判断結果と測定値とを比較し,測定値に基づいた耳小骨保存の判断基準を定める.
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