配分額 *注記 |
8,700千円 (直接経費: 8,700千円)
2001年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2000年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1999年度: 4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
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研究概要 |
象牙質の再生に関与すると思われる遺伝子を,象牙質窩洞を形成したラット臼歯の歯髄からsubtractive hybridizationによって得た。その総数は,250bp以上の断片長のものに絞ると,歯髄傷害時に発現量が増加したものが16種,減少したものが7種であった。増加したものには,チトクロムc,カテプシンB,機能が不明な3種のEST(expressed sequence tags)遺伝子,さらに1種類の未知の遺伝子を含んでいた。減少したものには,リボゾームタンパク,ラミニンγ2鎖遺伝子,I型コラーゲンα2鎖遺伝子,さらに2種の未知の遺伝子を含んでいた。これらの遺伝子の歯髄内における発現状態(発現している細胞とその位置)をin situ hybridizationにて調べようとした。しかし,明瞭な結果を得ることに至っていない。一方,Northern hybridizationによって,1種類のEST遺伝子の発現の差が最も大きいと判断できた。そこで,この遺伝子の全長を得て,この遺伝子は約3.8kbであること,そしてヒトFIP-2(Adenovirus 14.7kDa-interacting protein)に一部分で83%の相同性があることが判明した。さらに,この遺伝子は,FIP-2遺伝子よりも翻訳部分が長く,ジンクフィンガードメインとロイシンジッパーを含むコイルドコイルドドメインの構造を持っていた。 一方,既知の遺伝子を歯髄組織に導入する試みは昨年までの進展状況から変化していない。ベクター系をプラスミド系とウィルス系の2種を用いて,導入効率を検討する段階にある。β-ガラクトシダーゼ遺伝子を組み込んだAdenovirus系の発現ベクターを用いて展開した。導入効率はプラスミドベクター系よりも高いようであったが,導入されている部分は歯髄組織の最表層であり,両ベクター間での違いはほとんどなかった。深部への浸透を必要とするのか,あるいは表層でよいのかを考察する必要がある。 特定の遺伝子を選択することと遺伝子導入の効率を考慮することが,本研究の根本的な問題である。遺伝子導入の効率向上と反復使用を可能にするベクター系の開発が必要である。さらに,特定遺伝子の同定が進んできているので遺伝子の選択という問題は解決されるであろうが,発現誘導を歯髄のどの部分で行えばよいかが今後の問題となるであろう。
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