配分額 *注記 |
8,100千円 (直接経費: 8,100千円)
2001年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2000年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1999年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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研究概要 |
近年,種々の遺伝子疾患に対し遺伝子治療が導入されつつある.癌の本態が遺伝子の変化によって起こることが明らかにされるにつれ,癌抑制遺伝子を用いた遺伝子治療が,癌治療において今後広がることが予測される。口腔癌治療においても癌抑制遺伝子を用いた遺伝子治療が必要になると考えられるが,本研究では,米国ハーバード大学歯学部のWongらのグループが,ハムスター,マウス,ヒトからクローニングした口腔癌抑制遺伝子doc-1に着目し,その遺伝子治療の可能性を検討した. (1)臨床材料では約40%の口腔癌においてDoc-1の消失を認めた.Doc-1と組織学的態度との有意な相関は認められなかったが,Doc-1の発現は浸潤の強い症例に認められ,発現の消失は浸潤の弱い症例に認められる傾向にあった. (2)Wongらが最初に用いたハムスター頬粘膜癌細胞株HCPC-1にdoc-1を遺伝子導入しヌードマウスの皮下に移植したところ,対照群と比較して,腫瘍の増殖傾向は強く,周囲組織への浸潤および転移を認めた. (3)数種のヒト口腔扁平上皮癌細胞株の蛋白発現をウエスタンブロット法でスクリーニングしたところ,subconfluentの状態では,ほとんどの細胞株でDoc-1蛋白の発現を認めた. (4)極めて動物細胞への導入効率が高いHIVウイルスの感染性をコードしたTAT蛋白遺伝子に,このヒトdoc-1遺伝子を組み込んだTAT-doc-1遺伝子を構築し,大腸菌に導入,大量培養を行いTAT-doc-1タンパクを精製した.このfusion蛋白をDoc-1の発現が認められ無かったヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-3をヌードマウスに皮下移植した腫瘍に直接注入し,抗腫瘍活性を検討したが,癌の増殖を抑制しなかった. 以上の結果,予想に反しdoc-1は癌の増殖と浸潤転移の促進に関与する可能性が示唆され,少なくとも癌抑制遺伝子としての遺伝子治療の標的遺伝子になる可能性は低いと考えられた.
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