研究課題/領域番号 |
11557161
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
外科系歯学
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 哲治 広島大学, 歯学部, 教授 (00169153)
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研究分担者 |
林堂 安貴 広島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (70243251)
虎谷 茂昭 広島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (90172220)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
13,400千円 (直接経費: 13,400千円)
2000年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1999年度: 7,900千円 (直接経費: 7,900千円)
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キーワード | KGFR / FGFR2-IIIb / ヒト唾液腺 / 唾液腺多形性腺腫 / 唾液腺腺癌 / 無血清培養 / 遺伝子発現 / 遺伝子診断 / 遺伝子治療 / FGF / FGF受容体 / 唾液腺腫瘍 / MAPK |
研究概要 |
正常唾液腺上皮細胞(SGE)、多形性腺腫由来細胞(PA)および唾液腺腺癌細胞(SGA)を無血清培地で培養し各細胞におけるFGFR遺伝子の発現をRT-PCR法にて解析した結果.SGEはKGF/FGF-7受容体であるKGFR/FGFR2-IIIbのみを、PAではFGFR2-IIIbおよびFGFR3を、SGAはFGFR2-IIIbを発現しておらず、FGF-2をリガンドとするFGFR1-IIIcを発現していた。従って、正常唾液腺においては上皮系細胞と間葉系細胞は、KGF-KGFR/FGFR2-IIIb系を介してたがいに依存しあってその増殖、分化と機能を維持しているが、腺癌細胞は間葉系組織とはまったく独立して自己増殖することが可能となりその悪性化が強く裹付けられた。次に、SGA細胞HSY株に野生型KGFR/FGFR2-IIIb遺伝子を導入した結果、KGFR/FGFR2-IIIb導入SGA細胞(HSYR2-IIIb)の無血清培養系での増殖能は親株と比較して著しく低下した。さらに、HSYR2-IIIb細胞ではアミラーゼおよびラクトフェリンの発現が上昇していることが免疫染色およびRT-PCRの結果明らかとなった。また、DNAラダー形成や活性型Caspase-3の発現上昇を認めた。これらの結果から、KGFR/FGFR2-IIIb導入によりHSY細胞において分化およびアポトーシスが誘導されていることが示唆された。KGFR/FGFR2-IIIb細胞におけるMAPキナーゼの活性を検討したところ、KGFR/FGFR2-IIIb細胞ではP38経路が遮断されていることが判明した。 さらに、HSYR2-IIIbをヌードマウス背部皮下に移植し造腫瘍性および増殖能について検討した結果、すべてのクローンの増殖性は低下し、一部のクローンでは造腫瘍性を失った。またHSYR2-IIIb由来ヌードマウス腫瘍の組織像を検討したところ、導管形成などの分化像を認め、TUNEL陽性細胞も出現した。 次に、HSY細胞をヌードマウス背部皮下に移植し、腫瘤形成させた後electroporation法にてKGFR/FGFR2-IIIb遺伝子を直接導入した。その結果、腫瘍移植1週後に遺伝し導入すると腫瘍は完全に消失した。腫瘍移植2週後に遺伝子導入すると腫瘍は消失しないものの腫瘍の増殖は停止した。これら腫瘍組織におけるKGFRタンパクの発現を免疫組織学的に検討した結果、遺伝子導入1週後では90%の腫瘍細胞がKGFRを発現していた、4週後においても約60%の細胞がKGFRを発現していたことから遺伝子導入効率は極めて高いことがわかった。 以上の結果から、ヒト唾液腺腫瘍の癌化過程にFGFR遺伝子の差異発現が深く関与していることが明らかとなるとともにFGFR遺伝子を標的としたヒト唾液腺腫瘍の遺伝子診断・治療が可能であることが明らかとなった。
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