配分額 *注記 |
7,600千円 (直接経費: 7,600千円)
2002年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2001年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2000年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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研究概要 |
本研究では相互に関連した3種の天然有機化合物である細胞周期阻害活性環状ペプチドGE3,アポトーシス誘起活性環状ペプチドポリオキシペプチン,抗腫瘍活性環状ペプチドパプアミドの全合成研究を行うと同時に同族体の合成を通して新しい作用機作を持つ抗癌剤の創製を目指している。GE3は環状ヘキサペプチドで細胞周期のG1期からS期への進行を制御する転写制御因子E2Fを阻害し,強い抗細胞活性を示す。また,ポリオキシペプチンはGE3と同族の環状ヘキサペプチドで人すい臓癌細胞に作用してアポトーシスを誘起する。はじめにGE3とポリオキシペプチンのポリケチド部分の立体選択的合成法の開発を行った。GE3のアシル側鎖はSharplessの不斉ジヒドロキル化反応,2度の不斉補助基を用いたアルドール反応を鍵反応として構築した。ポリオキシペプチンのポリケチド部分は酒石酸を不斉源とするSharpless不斉エポキシ化反応,続いての有機銅試薬による位置選択的なオキシラン環開環反応を鍵反応として合成した。(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-メチルプロリンは二通りの方法により効率的な合成法を開発した。一つはヨウ化サマリウムを用いる分子内閉環反応よるものと,もう一つはマイケルーアルドール縮合を鍵段階としたもっとも短工程の合成法である。また,(2S,3S)-3-ヒドロキシロイシンは2-アシルアミノ3-ケト酸エステルの動的速度論的分割を利用した不斉還元法で合成した。(3R,5R)-5-ヒドロキシピペラジン酸はジアステレオ選択的ストレッカー反応を鍵段階として立体選択的に合成することに成功した。特異な構成成分の合成法が開発できたので,現在環状ペプチド構造の構築を検討している。 海洋産抗腫瘍活性パプアミドは海綿から単離された抗HIV,抗白血病活性を有する環状ペプチドである。特異な構成成分β-メトキシチロシン,(2S,3S,4R)-3,4-ジメチルグルタミン,(2S, S)-2,3-ジアミノブタン酸、新規脂肪酸(Dhtda)等を含んでいる。微量成分であることと構造的な不安定性からβ-メトキシチロシンとDhtdaの絶対配置は決定されていない。これまでに3,4-ジメチルグルタミンの立体選択的合成法の開発に成功した。β-メトキシチロシンの絶対配置を決定するために必要な4つの異性体の効率的な合成法を開発した。今後環状構造に含まれるβ-メトキシチロシン,Dhtdaの絶対立体配置を決定し,全合成を完成する予定である。
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