研究概要 |
本研究では,数値データ等ですでに研究されているデータ同定の技術を画像中の物体同定に応用し,統計的に「与えられた2つの画像が,同一の物体のものである確率」を評価することによって,画像中の物体が求める物体であるかどうかを識別する方式を開発した.本研究の成果として,(1)ロジスティック判別分析を応用した物体同定方式の開発,(2)(1)の物体同定方式へのニューラルネットワークの導入を行った.また,(1)(2)に関連する研究として,(3)布地に対する人間の感性と画像特徴量の関連の研究,および,(4)統計的識別の基礎研究を行った.以下(1)(2)について説明し,関連研究(3)(4)は省略する. (1)2つの画像の組を与えたときに,それらに写っている物体が「同じカテゴリーに属する物体」か,「異なるカテゴリーに属する物体」かを,その確信度とともに判別するプログラムを開発した.このプログラムでは,既知の画像の各組について,いくつかの特徴量についての2つの画像間の隔たりを求め,その特徴量空間で「同じカテゴリーに属する組」と「異なるカテゴリーに属する組」とを最適に判別するロジスティック判別関数を最尤法で求める.新たに得られた画像の組を入力すると,この組が「同じカテゴリーに属する」か「異なるカテゴリーに属する」かの判断とその確信度が得られる.木の葉の画像を題材としてこの方法を適用した. (2)(1)で開発した方式の誤判別率を低下させるため,誤判別率が高い場合についてのみ3層ニューラルネットワークによる判別を結合し,ロジスティック判別分析の明快なモデルによる確信度の表現と,ニューラルネットワークの高い判別能力を併せ持つシステムを開発した.その結果,ニューラルネットワークとほぼ同等の判別能力をもち,かつ学習に要する時間を数分の一とすることができた.
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