研究概要 |
私の本研究は,世親が『阿毘達磨倶舎論』(以下『倶舎論』)を執筆するにあたって,どの程度『瑜伽師地論』(以下『瑜伽論)』に依存していたかを,この両文献を比較検討することによって解明することである,しかし『倶舎論』は,長大かつ複雑なテキストであるため,衆賢による『倶舎論』反駁書たる『順正理論』を利用しつつ,以下のように本研究を進めることとした.正統派有部の立場に立つ世親の批判者・衆賢は,『順正理論』において世親の有部正統説からの逸脱を指摘するとき,世親のことを「経主」と呼んでいる.従って,まず『順正理論』をコンピューター検索して「経主」の用例を収集し,次には,『倶舎論』において,衆賢の批判対象となっている箇所を特定した.さらに,衆賢による世親批判の趣旨と,その根拠を正確に理解した.そして最後に,『瑜伽師地論』をコンピューター検索して,関連箇所を探した. 合わせて『倶舎論』の第一、第二、第三章を調べた.それから『倶舎論』のサンスクリットテキストと『瑜伽師地論』の漢訳を入力した,その次に,結果を分析して,研究レポートの序章を書いた.最後に,出版するためにこの研究全体についてのレポートを作成した.
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