研究課題/領域番号 |
11610059
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
美術史
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 幹郎 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (60185874)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2000年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1999年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 映画 / 映画館 / 舞台 / 視線 / 日本映画史 |
研究概要 |
一九五〇年代初頭、映画館設備の改善と拡充にたいする期待と欲求は京都のみならず日本全国で高まる。その気運を反映するかのように戦後復興期に映画館の新設ラッシュがつづくなか、設計と運営の両面から「近代映画館」の誕生をうながす論文が一九五一年『キネマ旬報』にあいついで発表される。なかでも特筆すべきは三回にわたって連載された「近代映画館の傾向と示唆」と「銀座コニー劇場 經營と施策」と題された二篇の論文である。前者は建築家としての専門的立場から、「わが國の映書館」がいかに「科學的な合理性を缺き、建築學的な原則を無視し、觀客へのサーヴィスを忘れている」かを具体的に指摘しつつ、「近代映画館」のあるべき姿を主に建築構造の面から提言する。いっぽう後者は懸賞論文当選第一席となった読者の映画劇場経営論であり、映画館「銀座コニー劇場」がいかに顧客を遇すべきか、設備、サーヴィス、宣伝、番組編成などに関して、立地条件を考慮しつつ緻密なシュミレーションを展開する。このふたつの論文はいずれも観客が映画館に何を求め何を望んでいるかを、観客の身になって詳細に記述し、それゆえ映画館経営者にとってはきわめて実効的な示唆にとんだ考察となっている点で共通する。『キネマ旬報』という日本の代表的な映画雑誌が、その誌面を観客から見た理想の映画館についての提言でかざった時期、それが一九五〇年代初頭なのである。興味深い点は、『キネマ旬報』のふたりの論者が主張する理想的な「近代映画館」とは、ただたんに「近代劇場と呼ばれるため」に館内設備の拡充をはかった、物質的に豊かなだけの映画館とは異なるという点である。そこでは空調設備や待合室や喫茶室そして公衆電話などの各種付帯設備が充実しているのは当然のこととして、重要なことは、そうした実際的な最新設備以上に重視されるのが館内全体の雰囲気だということである。
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