研究概要 |
我々の研究では,インコを被験体として脳の聴覚関連反応部位を検討し,カジカを被験体とした研究では,振動性(聴覚)刺激の認知が主に餌取り行動とどのように関係しているかを検討した。 インコを被験体とした聴覚性感覚の研究では,大きく分けて二つのことを行なった。先ず始めに,脳内の特定部位の正確な同定を行うために,脳定位固定装置を開発・試作し,最終的な装置を製作した。第2の研究課題として,この定位固定装置を用い,音声刺激に反応する神経細胞集団である聴覚関連核の精査を行なった。放射性同位元素でラベルされた2DGを投与し,インコに音声を聞かせた後,脳を摘出し,オートラジオグラフィー法により薄切片の黒化像を見た。その結果,上行性の聴覚経路として2系統有ることが明らかになった。一つは.蝸牛神経核からの上行し,MLDやField Lなどが含まれる,視床を経由しない聴覚経路であり,他の経路は,BasやNFなどを含む別神経核を経由する聴覚経路であった。 カジカを被験体とした研究では,バイカル湖産カジカ(Paracottus kneri)と日本産カジカ(Cottus pollux)による餌取り行動を利用して,振動性刺激に対する行動を調べた。バイカル湖産カジカはヨコエビを主餌としていることから,生餌としてのヨコエビの動きを利用して,カジカの餌取り行動を観察した。その結果,死んだヨコエビを提示されても餌への接近行動はあまり生じないが,泳ぎ回る餌に対しては積極的に追跡し,捕獲することが観察された。このことは,餌の動きがこのカジカの餌取り行動を誘発するのにきわめて重要であることを示すものであった。またこの餌の動きに対する餌取り行動の誘発性を利用して日周性を調べたところ,日没後にもっとも活発であり,また日の出前にもかなりの活動を示す,2相性の日周性が示された。日本産カジカでは,人工飼料の動きに対する餌定位行動・餌取り行動を調べた。その結果,動く餌に対しては餌に正対する定位を示し,その後餌を捕獲する確率は非常に高いが,動かない餌に対しては定位できず,また餌を捕獲する確率も非常に低いものであった。これらのことからどちらのカジカにおいても.餌の動きは餌取り行動の誘発にとって重要な要因であることが明らかになった。
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