研究概要 |
1.近時,日本語の認知研究は,英語圏で提唱された認知理論やモデルの普遍性を吟味する試金石として海外からも注目されている。認知心理学分野では漢字を実験材料とする研究論文が多く発表されているが、頻度の要因について刺激統制が十分でないものが多い。この問題を解決するため,認知科学に資する漢字頻度表を作成し、インターネット上で公開した。このデータの一部は,すでに米国の大学において漢字学習教材の開発などにも利用されている。 2.心理学研究や日本語教育などの分野で役立つ日本語資源を構築することを目的として、大規模な日本語テキストデータを対象に、文字および語彙の使用実態を調査した。具体的には、メディアの相違や時代変化が文字使用に与える影響を分析した。また、基本漢字500字や学年別漢字配当表に掲載されている漢字の使用頻度特性を明らかにした。さらに,使用頻度の高い漢字を対象に、構造別漢字データベースの開発を行い、日本語教育での教材作成支援に役立つ資料を得た。 3.すでに得られている日本語資源データの有用性に関する検証実験を行なった。浮田ら(1996)によって明らかにされた日本語単語の主観的表記頻度に基づく「表記の親近性」がひらがな単語の認知に及ぼす効果を検討した。その結果、「表記の親近性」は明らかに単語認知を規定する要因となることが確認され、データの有用性が示された。
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