研究概要 |
複数の質問項目に対して,4〜7段階の反応を求め,それを合計して個人の得点とするというのがリッカーと尺度である。こうしたカテゴリカルな反応は,序数データ(順序尺度)と考えられるから,多くの初学者や心理学の外部の研究者はこの方法に疑問を持ち,無反省な数量化と呼ぶ者もある。一方,数量化III類は,これに対抗して推薦されることの多い方法であるが,項目群が複数の次元からなると考えられる場合,数量化III類と,カテゴリカルな反応を数値と見なして行なわれる(広義の)因子分析の結果とは食い違い,しかも数量化III類からは,特有の非線形な数量があらわれる。通常の心理学者は,因子分析から得られる多次元的構造を歓迎するであろう。 本研究は,(アイテムカテゴリー型のデータに対する)数量化III類と,非計量的主成分分析の特徴を併せ持つ一般化された方法(Murakami,Kiers & Ten Berge,1999)を用いて,各種のリッカート型データを分析することを通じ,少なくとも通常用いられるような範囲の次元数である限り,数量化III類の意味での量化が正当であるとすれば,リッカート尺度とその因子分析も正当であるとみなせる場合が多いことを示した。また,数量化の結果にしばしば現れる非線形成分が,リッカート型のカテゴリカルデータの場合,極端反応傾向として解釈できる場合があることを示した。特に,第3主成分の解釈から,リッカート尺度において,実際に問題になる極端反応の影響を補正できる可能性が示唆された。 それ以外に,非計量的主成分分析に斜交回転を導入することによって,結果の解釈可能性と説明しやすさが増すことや,尺度構成における,いわゆる残余項目の意味についても検討した。
|