研究概要 |
1,本研究は,(1)集団場面における聴覚障害幼児の手話及び音声言語による会話を詳細に観察・記録し,その発達過程を跡づけるとともに,(2)手話から音声言語への橋渡しとして絵本読み場面に着目し,母子間の手話による対話がどのように文字や音声,文へと結びついていくのかを記述的に明らかにすることを目的とした。 2,まず,手話の導入を積極的に行っているAろう学校幼稚部年少,年中,年長クラスを対象とし,自由保育場面での聴覚障害幼児同士や教師との会話をビデオにより観察・記録した。 3,得られたビデオ資料から会話のエピソードを抽出した。さらにそれらを,手話,身振り,音声語などにより詳細に書き起こし,その際,社会的な行動や文脈的な特徴なども付記した。 4,幼児の発話を,その機能から呼びかけ,提案,承認など11のカテゴリーに分類できた。ミス・コミュニケーションの状況で,繰り返し,言い換え,通訳,訂正など修復のストラテジーを様々に発達させていること,また相手や状況に応じて様々なモードを使い分けていることなどが明らかになった。 5,ろう母子による絵本読み場面での手話による対話と文字や文への参照との関わりについて観察を行った。手話の初語発達以前に注意による対話が見られた。絵本の内容と形式(文字や音声)との関わりは主としての指文字で行われていた(1歳代後半)。またそれ以前に,文字を指でなぞる(本人が自主的に,あるいは親による援助により)行動が頻繁に見られた(1歳半頃)。手話による対話の中でのプレリテラシー活動の重要性が示唆された。
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