研究概要 |
【問題および目的】本研究は、「個としての達成」と「他者へのケア的関与」の視点から、成人女性のアイデンティティ発達変容のプロセスを分析することを目的とした。質問紙による予備調査I・IIの後、以下の個別面接による本調査を行った。 【方法】(1)調査対象者:40・50代の女性20名(幼稚園・小中学校教師4名、大学の研究者7名,その他の専門職3名、主婦6名)。(2)手続き:個別の半構造化面接。 【結果および考察】1.成人女性のアイデンティティ発達変容プロセスは、現在(中年期)のライフスタイルよりも、青年期のアイデンティティ形成の基盤を「個」と「関係性」のいずれにおくかによって、大きく異なっていた。 2.青年期のアイデンティティ形成のタイプ:職業的自立への強い志向性をもつ【個の達成志向型】と、結婚・家庭建設を最重要課題とする【関係性志向型】の2タイプが見出された。 3.青年期以降のアイデンティティ変容のプロセス:【個の達成志向型】(16名)は、その後、(1)職業アイデンティティ達成型(12名)、(2)職業アイデンティティ挫折型(1名)⇒【関係性志向型】へ移行,(3)職業的モラトリアム型(3名)へ分化、変容していた。【関係性志向型】の4名は、その後家庭を基盤とした関係性の深化が見られた。 4.中年期のアイデンティティ危機の特質:中年期のアイデンティティの危機は、中年期のNegativeな変化(岡本,1985)にともない、(1)中核的自己(自分が関与・達成してきたもの)と、(2)役割のバランス、家族・夫への関与などトータルな生き方、の2つの次元でアイデンティティの問い直しが行われることが示唆された。 5.中年期のアイデンティティ再体制化のパターンには、(1)精神化、(2)社会化、(3)純化の3つのパターンが見出された。
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