研究概要 |
本報告書は乳児期の愛着がその後の愛着や発達を予測できるかという問に答えようとしたものである.具体的には,生後12か月時にStrange Situation Procedureで愛着のタイプを測定されている子どもの18年後の追跡調査である.12か月時のサンプル60名のうち,現在の所在が把握でき,協力を承諾してくれた28名(乳児期の愛着のタイプはB, C, C1タイプそれぞれ,16,6,6名,男女14名ずつ)に対して,平均19.5歳になった時点で面接調査と心理測定をした.調査の内容は,成人用の愛着(Adult Attachment Interview),人間関係の調査,QOLに関する測定,そして,小学生時代の人間関係と生活史についての回顧的報告などであった.また,生活史についての正確さを高めるために母親にも郵送で調査を依頼した.本報告は3研究から成る.研究1では主としてAAIの理論的検討をした愛着研究の最近の研究動向をまとめ,愛着と人間関係研究との関連を検討し,また,わが国でのAAIの妥当性や問題点について論じた.研究2では愛着の連続性仮説を検討したが,乳児期の愛着と現在の愛着には明確な連続性は見出されなかった.研究3では愛着の発達予測性についての仮説を検討した.乳児期の愛着と現在の人間関係およびQOLとの関連を検討したが,一貫した連続性は見出されなかった.両親の離婚,高校中退,学校でのいじめなどのライフ・イベントが乳児期からの愛着の変化に影響を与えるかについて検討したが,これについても明らかな傾向は見出されなかった.さらに詳しい検討の必要性が残されている.
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