日本では、人口構成における高年齢者の比率の増大により、企業において、高年齢者の扱いが重要な問題となっている。本研究は、高年齢者のもつ作業遂行能力の特性把握を、若年者との比較によって行ったものである。 実験課題は、レゴブロックを用いる組立作業とパーソナルコンピュータのキーボードからの文字入力作業である。高年齢者と若年者(大学生)の2群を被験者として用いた。1999年度には、5回の連続試行による作業パフォーマンスの変化を課題ごとに分析し2000年度には、それぞれ作業課題の内容を変更してさらに実験を継続し、疲労と作業行動との関係にも注目した。続いて、2001年度には、組立課題に2種類の難易度を設定し、2種類の教示条件との関連で技能習熟プロセスの違いを分析した。 主な結果は以下の3点である。(1)高年齢者は、新しい課題への初期対応が悪く、作業動作もゆるやかである。(2)高年齢者は、作業内容をいったん理解すれば、動作時間は若年者に劣るが、根気よく正確に作業を遂行できる。(3)文章による教示と写真による組立プロセスの教示という2通りの条件比較では、被験者群間よりも、課題の難易度間で効果の違いが明らかになった。高齢者は、作業1回目の作業時間が非常に長いが、2回目に説明書を参照する時間が急減することで作業ミスが増大し、結果として作業時間は短縮されず、思いこみによる作業遂行傾向が示された。 課題の種類によって、効果的な課題教示の仕方が異なり、より効率的な技能習熟やミスの少ない安定した作業遂行のためには、若年者、高齢者の特徴を理解した上で、教示方法の工夫が求められる。
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