研究概要 |
Dodge(1980)の社会情報処理過程モデル(Social Information Processing model)に基づいて、桂田(Katsurada,1995)は、アメリカの幼稚園児を対象にした調査で、他人の行動を敵意的に解釈する傾向と攻撃行動との関連性を見いだした。本研究では、アメリカで行われた桂田の研究を日本人サンプルで追試した。追試にあたり、幼児の偏った行動解釈の仕方を測定するためのビデオテープを作成し、そのビデオテープに収めた同年代の子どもの行動を見て、行為者の意図を判断する課題を与えた。幼児の攻撃性はPreschool Behavior Questionnaire(Behar & Stringfield,1974)の翻訳版「就学前児童の行動に関する質問紙」を用い、母親と先生に別々に評定してもらった。対象者は保育所・保育園に通う幼児173名(平均年齢61ヵ月)であった。その結果、母親と先生は幼児の違う行動に攻撃性を見ていることがわかり、敵意的な物の見方を持った幼児は先生から見ると、より攻撃的であることが発見された。この結果は、アメリカでの結果と一致するものであった。また、母親への質問紙で養育行動、日常的ストレス、子どもの気質、愛着安定度などを聞き、それらの要因と子どもの攻撃性との関連も調査した。その結果、それらの要因は母親評定の幼児の攻撃性とは直接的に、または間接的に関連していることが示された。しかし、先生評定の幼児の攻撃性とは何等関連がなく、幼児の他人の行動を敵意的に解釈する傾向を説明する要因でもなかった。こうした幼児の偏った行動解釈に影響する要因が何であるのかを探るのが今後の研究課題である。
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