研究概要 |
三重県答志島では,青年宿(寝屋子)が現存している。青年たちの親は,自分の子どもが中学を卒業する前に,我が子がコミュニティで生活していくための社会教育を寝屋親に頼む。そして,青年は実の親子関係だけでなく,寝屋親との二次的親子関係を結ぶことになる。日常的には,青年たちは自宅で夕食を食べた後,青年宿(寝屋子)に集まってくる。そして,そこで寝屋親による青年たちへの社会教育が行われるのである。その内容は,コミュニティで生きていく上で大切な価値や態度であったり,進路・人生相談であったり,異性のことであったりする。本研究では、答志島の青年宿(寝屋子)を対象として、そこで展開している寝屋親と寝屋子との二次的親子関係の特徴と青年期発達について検討した。寝屋親-寝屋子関係(二次的親子関係)の実際について、青年宿への参加観察と聞き取り調査を行った結果、(1)漁業者の親子の場合、職業的には、青年は父親の船に同船して周辺的な仕事を手伝いながら父親から徐々に漁業技術等を学んでいく師弟関係であった。(2)父親との関係が職業的師弟関係であるため、家庭生活における父親との関係も変化し、青年にとって父親は重い存在となる場合があった。(3)年齢的に青年と父親の中間にある寝屋親は、父親に対する青年の両価的な気持ちを受けとめると同時に、父親が感じている気持ちも伝えることによって両者を橋渡ししていた。これらの結果を,青年期発達を支援する伝統的社会システムの観点から考察した。
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