研究概要 |
本研究は,ペットを飼っている都市部の高齢者を対象とした調査データに基づいて,高齢者とペットとの間で取り交わされる情緒的な交流を量的に把握する尺度を新たに作成し,この結果をふまえて,ペットとの交流が高齢者の精神健康と幸福感に及ぼす影響について検討することを目的とした.本研究のデータは,ペットを飼っている60〜74歳の男女600人を対象とし,郵送法により実施された調査から得られた.調査対象者は調査会社が有する首都圏に居住するモニターのうち,犬もしくは猫を飼っている高齢者であった.有効回収数は552であり,有効回収率は92%であった.回答者のペット飼育状況は,犬を飼っている者が69.6%,猫を飼っている者が39.7%であった.年齢階級別でみると,犬を飼っている者は男女とも年齢が高くなるにつれて多くなるのに対して,猫を飼っている者は男女とも年齢が高くなるにつれて少なくなっていた.男女別では,犬を飼っている者は女性に比べて男性で多く,猫を飼っている者は男性に比べて女性で多かった.尺度についての分析の結果,6項目で構成されるペットとの情緒的一体感尺度は十分な信頼性と妥当性を有することが確認された.これらの結果は,本研究で作成されたペットとの情緒的一体感尺度が人とペットとの関係を適切に評価できることを示すものであった.ペットとの情緒的一体感と精神健康の関連が認められ,ペットとの関係が親密な者ほど抑うつ状態や孤独感で示される精神健康が良好であった.
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