研究概要 |
本研究の目的は,配偶者との死別後の最初の数年間での回復のあり方が,その後の人生におけるサクセスフルエイジングを予測するとする仮説を明らかにすることである.調査対象者は配偶者と死別した184名の中高年者(平均年齢70.9歳,配偶者と死別後平均8ヶ月)で,死別後の16年間に3回の面接調査を行った.第2回調査は初回調査の翌年に,第3回調査は初回調査から15年後に実施し,第2回調査は136名,第3回調査は51名の対象者から回答を得た. 分析は,サクセスフルエイジングの指標となる変数(安否,精神的健康,いきいき尺度)を従属変数に,死別後の回復の指標となる変数(抑うつ感及び孤独感の変化)を独立変数にしたロジスティック回帰分析と重回帰分析を行なった. 抑うつ感は第2回調査時の安否を予測する有意な要因であったが,第3回調査時の安否を予測しなかった.孤独感は第3回調査時点における病気や死亡のリスク要因で,第1回調査から第2回調査にかけて上昇した場合には第3回調査時点で病気や死亡の危険があることが判明した.孤独感はまた第3回調査時の精神的健康や幸福感を予測する要因でもあった.死別後に孤独感の上昇が見られたり,孤独感が高い状態にある場合には第3回調査時の精神的健康状態が悪く,また死別後孤独感が低下する場合には第3回調査時の幸福感が高まることが判明した. 以上の結果から配偶者との死別後の孤独感の回復のあり方は,その後の人生におけるサクセスフルエイジングを予測すると結論した.
|