研究概要 |
児童労働発生をプル要因とプッシュ要因に分け,それがネパールと同じ後発途上国のミャンマーではどの程度,適合するかを分析した。少ない既存の統計資料や関係資料を用いて分析し,加えてヤンゴン市都市部の貧困地区において実態調査を行った。その結果,次のような成果が見られた。 1.児童労働の温床は都市インフォーマルセクターにあるとの多くの研究者の説は,調査したヤンゴン市都市部の貧困地区では適合しないことが判明した。理由はヤンゴン市貧困地区での初等教育の在学率が高いことと,ミャンマー政府の管理統制による。 2.児童労働は家計補助のために行なわれるという家計補助労働説はヤンゴン市の児童労働者にも適用されることがわかった。 3.H.ラベンスタインが述べる高出生率と子どもを労働力としての価値をみた児童労働発生モデルはヤンゴン市のケースでは適用しづらい。理由は親の識字率が他の途上国と比べて非常に高く,また多子家庭が少ないことによる。 4.歴代のミャンマー政府の教育政策が親の識字率と子どもの在学率を高くした。深刻な児童労働は南アジアの国々よりも少ない。これはNon-Formal Educationとしての寺院学校の役割が大きいことと関係している。 5.国民の児童労働への関心はうすい。子どもの経済的独立性をうながす伝統的価値数と関係している。
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