研究課題
基盤研究(C)
高齢化社会の進展にともない、老人は社会保障や社会福祉の対象として論じられることが多くなった。しかし、老年もまたひとりの生きる主体であり、若年と同様にどのように生きるかを問わざるをえない。主体として生きる局面には、労働、学習、家庭、地域、友人などがあげられるが、本研究では、余暇に焦点を当てて、老年がどのように余暇活動を楽しんでいるか、そして、これからの新しい老年像のモデルを形成するためには、どのようなことが必要なのか、について研究してきた。余暇活動は数多くあり、本研究では、社交ダンス、旅行、湯治、スキューバダイビング、独自のサークル活動、リハビリテーションなどをとりあげた。報告書では、このうち、一定程度の成果を得た湯治、リハビリテーションについて論述する。湯治とは、かつては農閑期における農民の楽しみであったが、現在では、老年期の年金生活者(無職)などの楽しみとなっている。「医療の社会化」「社会の医療化」などによって、半病人=半健康人が多くなり、かれらが湯治に向かっている。しかし、湯治場は減少しつつあり、かつ湯治客たちの需要に答えていない。利用者は、ヘルシーな食事、清潔な部屋、安い宿泊料金、部屋・ベッド・風呂・移動におけるバリアフリー、新たなコミュニティ、温泉療法などを望んでいる。しかし、多くの旅館・ホテルではまだ十分に対応できていない。改善が求められる。リハビリテーションは、傷病などによって能力低下した身体を改善しようとする行為である。「医療の社会化」の結果、多くの人がかつては死なざるをえなった傷病や術後であっても、障害などを抱えつつ生きられるようになった。病院では治療してもそれ以上の改善が認められない場合、治療の必要はないとして、リハビリテーションをしたい者も追い出される場合がある。ここでは、余暇にリハビリテーションをしたい人びとがどのような気持ちで行っているか、実態を記述していく。
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