研究概要 |
本研究の目的は,第1に,中高年の人々が考えている望ましい老後の意識を構造的に明きらかにし,既存の「幸福な老い」の測定尺度との関連を検討し,その知見に立脚してわが国高齢社会における「幸福な老い」の程度を測定する新たな尺度(老後観尺度)を開発することである.第2に,開発された尺度により測定される幸福な老いの程度に関連する要因を明らかにし,今後のわが国高齢社会に必要とされる社会的条件を検討することである.調査は,45〜74歳の男女600人(首都圏360人,地方都市240人)を対象とし,郵送法により実施された.調査では,望ましい老後に関する30項目を用意し,それぞれについて「思う」,「思わない」のいずれかで回答を求めた.関連する要因として,基本属性である性,年齢,学歴,同居家族,現在職などを尋ねるとともに,心理・社会的属性である孤独感,生活満足度,社会的スキル,老人イメージなどを尋ねた. 分析の結果,老後観は,「変化志向」,「人間関係縮小志向」,「同調志向」,「悠々自適志向」の4つの因子で構成されていることが明らかとなり,従来の日本型老後観であった「悠々自適志向」を基本にしながらも,様々な方向性が試みられようとしていることがわかった.さらに,こういった方向性については,性,年齢,学歴とともに心理・社会的属性が関連していることが明らかになった.以上の結果から,4つの因子が,老後観を測定する尺度として有効であり,社会的条件から老後のあり方を政策的に検討することが可能であることが示唆された.
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