研究概要 |
本研究は,1949(昭和24)年に成立した教育職員免許法の中核理念である「教職の専門職性確立」という理念が,どのような内容と構造をもつものとして当時の教育関係者において理解・認識され,いかなる形で具現化・実践化がなされていったのかを明らかにすることを目的に,具体的には日本のモデルとされたアメリカの「学識ある専門職」理念の分析,日本側におけるアメリカ教師教育研究資料の分析,教員養成教育の実態分析という方法により取り組んだものである。その結果,免許法の「教職の専門職性確立」という理念は,教職という職業に特別に必要とされる教養の確立・整備という観点から法制化が図られたものであるが,そこには「教員養成」から「教師教育」というアメリカ教師教育研究の動きを背景に,その理念と内容が研究され,実践に移されていった経緯があることが解明できた。特に,免許法の立案においては当時のアメリカにおける研究成果が直接的に導入され,また後の教員養成カリキュラムの研究においてもアメリカのTeachers' Collegeのカリキュラムモデルが原案として活用され,作成された日本版カリキュラムはほぼその案を踏襲するものであったといえる。ここには,当時のアメリカ教師教育研究において,「教職の専門職性」というものが,いわゆる「学芸の教師」か「方法の教師」かという論争を越えて,「学識ある専門職」の確立という方向のもとで研究と実践か進められていた点に注目したのではないかという推論が成り立つ。しかし,そうした理念的動向がどこまで具体的なカリキュラム編成から実践レベルにおいて具現化されていったかについては,今回の研究だけでは十分に究明できなかった点でもあり,今後の課題である。
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