研究概要 |
本研究の目的は,異文化間コミュニケーション(西洋文化対東洋文化)の理論的枠組みの構築と異文化教育の教授項目の特定化及び,それを日本での外国語教育に適用させるためのシラバスの作成である。 異文化間コミュニケーション能力を養成する言語教育シラバスの理論的枠組みとして,文化が人間の概念およびコミュニケーションスタイルに与える影響を表す異文化間コミュニケーション・モデルを構築した。各文化固有の指向性(価値システム)をvindelbantの価値哲学における3元論(論理的・倫理的・美的)により分類し,その3元論に従って,人間の概念想起からコミュニケーション行動までの心理言語学的プロセス(価値・信条・規範・情意フィルター・言語機能・コミュニケーション行動)を分類した。その理論的基盤を構成する仮説は,論理学,Palmer(1990)の様相論理学を基盤とした3元論(epistemic,boulomaic,deontic),Austin(1962)Searle(1969)らの言語機能(発話行為理論)を基盤とした3元論である。この3元論により西洋文化の中心価値指向を論理主義・個人主義・自己開示主義と規定し,それに関わる言語機能を3分割することにより,現行の言語機能的シラバスに適応した文化的価値指向,信条,規範,言語形式選択のルールを記述した異文化間コミュニケーション・シラバスを構築した。 このシラバスの最大の利点は,現行の言語教育シラバスにこれまで別個として取り上げられてきた異文化間コミュニケーションの教授項目を関連させながら導入できることであり,従って外国語学習の初期段階からの異文化教育の導入が可能となることである。
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