研究課題/領域番号 |
11610314
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化人類学(含民族学・民俗学)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹沢 泰子 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (70227015)
|
研究期間 (年度) |
1999 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2000年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1999年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
|
キーワード | 人種 / 人類学 / 社会的構築物 / 植民地主義 / アメリカ / 人種差別 / 脱構築 |
研究概要 |
本研究は、「人種」概念について、文化人類学のみならず、自然人類学、歴史学、カルチュラル・スタディズなどの最新の成果を援用しながら、理論的な考察を試みるものであった。最近の自然人類学においては、人類集団の変異は連続的であり、遺伝子構成が互いに不連続な「人種」に相当する分集団は存在しないことが明らかにされている。また系統樹も恣意的と批判する声もある。そもそも既存の人種概念の根幹は、18世紀半ば近代科学の父祖により確立されたもので、それは西欧における「存在の大いなる連鎖」や旧約聖書の曲解、色のイデオロギーなどに立脚した、西欧中心的な価値観に拘束されたものであった。しかしそれが明らかな序列階層的イデオロギーを持つのは、19世紀後半の植民地主義とその脇役としての擬似科学によるところが大きい。 19世紀の人類学は、人種主義的な思想を煽る人種概念と共犯関係であったといえる。20世紀に入り、特にアメリカでは、それまでの人種概念を覆そうとする努力が一部見られたが、1990年代はこの問題に関する転機でもあった。アメリカ人類学会を中心として積極的に、社会的構築物、一つの世界観としての人種という理解を世にアピールする動きが活発化し、数々の公式声明も発表している。 他方、1980年代後半からカルチュラル・スタディズにおける人種にまつわる研究も増え、近代、国民国家、植民地主義との関連で人種を捉え直す傾向にある。過去の負の遺産を是正していくためには、人種概念が不可欠であり、かといって現実の社会現象は、人種主義が改善の見通しのない状況であり、過去と現在・未来をどのようにつなぐかという深いジレンマが存在する。 本研究の研究成果は、出版物のみならず、委員を務めた学術会議小委員会「人種・民族概念を検討する委員会」の報告書にも反映させた。また2002年の国際人類学民族学会議でのシンポジウムでも発表する予定である。
|