研究概要 |
本研究はメキシコ国ユカタン・マヤ社会における宗教的実践と医療との関係性を明らかにすること,特に宗教的実践が医療という社会的な実践とどのように接合しているのかを解明することを目的とした. その基礎的作業として,まずユカタン・マヤの身体観および疾病観に関わる民俗語彙を抽出するためのマヤ語・スペイン語辞書の電子テキスト化を行なった.使用した辞書は,「モトウール辞書」(1995年Ramon Arzapalo版),「ウィーン辞書」(1993年Rene Acuna版),「サン・フランシスコ辞書」(1976年Oscar Michelon版)およびピオ・ペレスの「マヤ語辞書」(1866-1877)である.電子テキスト化完了後,このマヤ語辞書コーパスを用いて身体観と疾病観にづいて分析検討した. 一方,平成12年9月と13年8月にはメキシコ,ユカタン州において,辞書から得られた身体および疾病語彙についてマヤ語ネイティブに確認するとともに,彼らの宗教的実践に関する現地調査を実施した. 以上の調査・研究により本研究では,従来あまり論じられてこなかったユカタン・マヤの身体観および生理学的知識,さらにはそれに基づいたユカタン・マヤの宗教的実践のありようが明らかになった. 本研究の成果は,平成13年6月2日に名古屋大学で行われた日本ラテンアメリカ学会研究大会と,同年7月25日にメキシコ,ハラパ市で開催された第5回国際マヤ学者会議で報告した.また,最終報告書として「ユカタン・マヤの疾病観-マヤ語・スペイン語辞書による民俗語彙分析」を作成印刷した.
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