研究概要 |
1.テル・マストゥーマ及びユーフラテス水没地区遺跡の遺構・遺物の実測図を入力してイラストレーターでトレースし,データベース化の作業を行った。また,図面と関連する写真も入力し,実測図と写真の一体化をはかった。図面のトレース及びデータベース化の作業は今後も継続して行っていく。 2.テル・マストゥーマの集落構造は出土遺物との関連で,部屋,家屋,街区の機能の把握検討を継続して行った。この成果の部は『Ancient Near Easten Studies Supplement 7』に掲載され,鉄器時代に再建されたテル・マストゥーマの町が9世紀初頭のハマト王国の対外政策によって植民した屯田兵の家族が居住する要塞の一つとして捉えることができた。 3.シリア,パレスチナにおけるオリーブ栽培の始まりと初期の発展について研究協力者の和田久彦が纏めた。東地中海世界で銅石器併用時代から前期青銅器時代において果樹栽培が始まり産業化していった。これは新石器時代の穀物栽培の開始を起点とする分業と社会の階層化が,この時代に地域的な分業化・階層化に発展して,より大きな相互依存型都市社会が出現したことと密接に絡まっていることが明らかとなった。 4.テル・マストゥーマ出土遺物の研究も継続した行われ,研究協力者の足立拓朗,西山伸一,赤沼英男により鉢形土器や石製容器の比較研究,大甕口縁を再利用した織錘の研究,さらに鉄関連遺物の科学的分析の結果が公表された。 5.最終年度に提出する本研究の「研究成果報告書」を作成した。さらに本研究で得られた成果は「古代オリエント博物館紀要」などで逐次公表していく予定である。
|