研究概要 |
本研究では、16世紀末から17世紀初頭に掛けて、日本での布教の為にイエズス会によって生産された、イエズス会辞書・字書(ラテン語関係を除く)の全文を電子データ化してデータベースとし、研究代表者(豊島)が従来から維持しているキリシタン文献総合データベースとの付き合わせを行って、キリシタン文献辞書・字書中の語彙と、実際の文献の使用語彙との計量的な研究を行う事で、キリシタン辞書項目の十全な理解に資する事とした。 具体的には、ローマ字綴り「日葡辞書」、漢字字書「落葉集」、について、全掲出語のデータベース化を行ない、これを、既に研究代表者(豊島)がキリシタン文献総合データベースとして維持している文語文ローマ字本キリシタン文献全種(「サントスの御作業」、「ドチリナキリシタン」、「ヒイデスの導師」、「コンテンツスムンヂ」、「サカラメンタ提要日本語附録」「スピリツアル修行」)、及び国字本キリシタン文献(「ぎやどぺかどる」、「おらしょの翻訳」)の全語彙との付き合わせを行った。 代表者の従来の研究からも、ローマ字本・国字本の語彙の差が顕著である事が知られていたが、辞書・字書に於てもこの差は顕著であって日葡辞書に多い口語語彙を除いても、辞書同士、又、文献・辞書/字書の付き合わせのそれぞれに、多くの特徴的な独自語彙を含む結果が得られた。 これらの付き合わせ結果の全体は膨大な量となるため、この報告書では、国字本最大の文献である「ぎやどぺかどる」全語彙を国字本字書「落葉集」本篇と照合した結果を示す事とする。ここでは、「落葉集」の持つ仏教(特に禅宗)関連の特徴的な語彙が、国字本文献では殆ど忌避されて利用されない事から、「落葉集」の全13,781語中、「ぎやどぺかどる」に現れるのは僅かに異なり1,543語である事が分かるが、この異なり語の延べ使用数は27,943回と、収載語彙の使用効率が極めて良い事が知られる。
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