研究概要 |
研究成果としてまず、約11,000,000語からなる口語英語のデータ・ベース(一般にはcorpusと言われる)が完成し、これをWordSmithなどの検索ツールを使って様々な角度からデータ分析を行えるようにしたことを述べておかねばならない。このデータ・ベースをもとに、語彙・文法レベルでの口語英語の記述的研究を行い、さまざまな形で成果を発表してきた。このような研究の具体的な成果の第一は、実際にコミュニケーションで使われる表現や,わが国の研究書や辞書などではカバーされていない問題がいかに多いかを改めて認識したことである。国外国内を問わず、文法の常識とされてきたことが、このデータ・ベースを利用することによって、次々と覆されてきた。話し言葉には、書き言葉にない「近接性」(proximity)あるいは「直線性」(linearity)という概念で捉えることができる特徴がある。これは、分裂文(cleft sentence)、there構文、文末疑問詞疑問文(sentence-final wh-interrogative)などの分析の中に具体化されている。第二に、このデータ・ベースを利用することによって、わが国の英語教育の中で特に重要な役割を果たす英和辞典の記述上の問題点が数限りなく明らかになってきたことである。この事実は、論文の他に、「語法の鉄人」(小学館ランゲージワールド,http://www.1-world.shogakukan.co.jP。平成13年2月開始、現在も継続中)の中で逐次公表中である。第三に、将来の可能性として、談話分析(discourse analysis)や会話分析(conversation analysis)、あるいは談話辞(discourse markers)の分析への限りない可能性を拓いたことである。第四の点については、今後の研究で明らかにしてゆきたい。
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