研究概要 |
ライプニッツの国語論に関する2次文献を,書籍及びコピー複写の形で網羅的に収集し,G.W.ライプニッツの言説を跡づけた.その際,より正確な理解が可能となるように,平成12年3月にArmin Burkhardt教授(Magdeburg大学)およびPeter Schmitter教授(Munster大学)を日本へ招聘して,専門知識の供与とわれわれとの討論をお願いした. このようにして,われわれはドイツとヨーロッパにおける啓蒙思想の展開とドイツ語の歴史的発展を歴史記述の諸問題への方法論的反省も踏まえて文献学的に研究し,ライプニッツの国語論をドイツ思想史・ドイツ語史のなかで位置づけることを試みた.その結果,判明したことは以下の通りである:ライプニッツは,統語論(文構造)に対する理解に足らないところがあったにしても,造語による言語改新や伝統的な専門表現と方言の採用による言語再生も頭に入れながら,ドイツ語が語彙面において世界的な学問語として発展し確立していけるように,実際的で具体的な提言を行った.実際にライプニッツの提言は,後世における学問語としてのドイツ語の発展に,確かに大きな影響力をもった.このことのとも関連させながら,われわれは阪神ドイツ文学会でのシンポジウム「思想としての正書法改革」(平成13年1月28日)において,パネリストとして新正書法導入問題をドイツ語史に照らして評価することを試みた.また最後に,今回の共同研究の副産物として,ライプニッツの書いた『悟性と言語のよりよい使用のためのドイツ人への戒め』と『ドイツ語の鍛錬と改良に関する私見』の翻訳を,本邦初の初訳として完成させることができた.
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