研究概要 |
近年,心理言語学,会話分析などの研究の成果から,人間の言語コミュニケーションは,さまざまなレベルにおける相互調整であることがわかってきている.電車のホームなど騒音下では,相手に聞こえるように声を大きくしたり,相手の話が聞こえない場合は,聞き返したりするような行動がその例である.このレベルには,そもそも相手に注意を向けているかどうか,音が聞こえる/聞こえないといったレベルから.単語、構文,意味的に言っていることがわかるレベル,話の流れの中で言っていることがわかるレベルまである.本研究では,話の流れにおける相互調整の解明を進めるため,話の流れの支配(主導権)に着目し、話の流れの支配範囲を決定するための基準,および,計算機による支配範囲の予測について研究を進めた.前者については,異話者の発話間の反応/応答関係,同一話者の発話間の連続関係に着目した基準を作成し,作業者間素一致率約90%(κ値約0.7)で作業が可能であることを明らかにした.後者については、接続詞、応答語句などの語彙情報,単語の分布情報に基づくクラスタリングによるブロック間距離の情報に対して,最大エントロピー法を適用し,再現率約70%、精度55%で予測可能なことを示した.
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