研究概要 |
この研究は,前5世紀におけるギリシア悲劇の発展とその変容の諸相をアイコキュロスの『オレステイア』,ソポクレスの『オイディプス王』,エラリピデスの『トロイアの女』の作品解釈を通じて明らかにしょうとするものである。『オレステイア』では,ポリス・アテナイにおける法の正義の確立過程を見た。『オイディプス王』では,自らの出自を探るオイディプス王像を,あくまで真実を追求する知の人と規定した。『トロイアの女』では,アテナイ市民の知の衰退に起因するアテナイ帝国主義の抬頭を指摘した。法nomosも知sophiaもギリシア民族個有の価値観である。その価値観が時代とともにどう変貌していったか.その諸相を観察することによって,ギリシア悲劇ことまさに前5世紀アテナイの時代精神の具現化に外ならないと結論づけることができるように思われる。
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