1.本研究の主たる対象は「アファーマティヴ・アクション・プログラム」であるが、それは、「従来差別の標識となってきた人種・性・体色などを考慮にいれた、差別の解消に向けた、過渡的な、積極的な努力であり、目標と時間割を決めて行う政策である」と定義すべきである。従って、「クオータ制」とは明確に区別して論ずべきである。 2.20世紀の米国において、差別解放運動は「カラー・ブラインド」を目標理念としてきたが、それは一応1960年代に、公式的には、実現した。 3.しかし、それだけでは歴史的に根深い差別の解消には不充分であるとの認識がAA政策を生んだ。これは、差別解放運動に亀裂を生んだ。 4.AA政策は5つの法的根拠に基づいて行われているが、それを実施するための詳細なガイドラインが政府機関等によって作られている。 5.AA政策の成果の評価は難しく、成功・失敗の両意見がある。また、AAに対する反対論もきわめて強固であり、理論的にもそれなりの根拠がある。他方、賛成の側の理論には近年重点の置きかたに変化がみられるが、私見では別種の根拠が要請される。 6.近年、AA政策に対する反対運動は高まっており、1996年にはカリフォルニア州においてProposition 209が成立するなど、この政策を禁止することにもなっている。その際、従来の支持者が積極的な反対の側にまわっていることが注目される。 7.近年の連邦最高裁の判例も、AA政策に敵対的な傾向を示しているが、違憲性審査基準には問題が多い。 8.AA政策やこれに似た政策は世界的に広まっており、日本にも導入されている。その是非は差別の具体的事例に応じて行わなければならない。
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